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湿布(シップ)についての豆知識その3(どんな薬が入っているの?)

こんにちは。
かんな接骨院代表の山崎です。

 

この記事は「湿布(シップ)についての豆知識その2(あったかいの?つめたいの?)」の続きです。

前回までのお話しで「パップ剤やテープ剤といった素材に、温感成分・冷感成分が含まれている」
というところまで出てきましたね。

ベースはこんな感じなのですが、ただ、最近のシップは多種多様です。
単に「温感・冷感のみ」のシップもあるのですが、
今では更に、これらのシップにお薬が含まれている物が多くなってきました。
ですので、今回はシップに含まれているお薬についてお話ししたいと思います。

今回は薬の話ですので、まず始めに言っておきたいことがあります。
それは何かと言いますと、私は、ただのしがない柔道整復師。
医師でも薬剤師でも登録販売者でもないということです。
ですから、今回のお話し(このシップの豆知識シリーズ)は、皆さんにおすすめの薬を紹介するとか、
皆さんに薬の使用方法を促すとか、そういった目的ではないということだけ御了承ください。

接骨院では当然、薬の処方や販売はできません。
が、しかし、時には患者さんの症状に合わせてシップを貼る場合があります。
ですから私を含め、当院では、以下にお話しするような内容や、
それ以上のことを勉強した柔道整復師が、患者さんの症状に合わせてシップを選びます。

今回は、その勉強内容の一部を紹介させていただきますね。

では、いってみましょう!

さてさて、まずは皆さんも一緒に考えてみましょう。
皆さんは、どんな時にシップを貼りますか?

おそらく、なんでもない時に貼る人はいませんよね。
多くの人は「痛みを感じている時」に貼るのではないでしょうか?

ですので、当然、シップに含まれているお薬というのは、
ほとんどが「痛み止めのお薬」ということになります(例外もありますが)。

一般的に「痛み止め」と呼ばれているお薬は、正式には「抗炎症薬」といいます。
つまり炎症を抑える薬です。
この抗炎症薬を体の中に入れる手段として、注射剤、座剤(座薬)、経口剤(飲み薬)、
経皮用剤(塗り薬や貼り薬)などが存在しているのです。

つまり「お薬入りのシップを貼る」ということは、
体の中に抗炎症薬を入れるための一つの手段であるということになります。

次に、この抗炎症薬なのですが、
更に「ステロイド系抗炎症薬」と「非ステロイド系抗炎症薬」とに大きく分けられます。
つまり、ステロイドか?、ステロイドじゃないか?、ということですね。

ステロイドというものは、もともと体内でも作られているのですが、
これを薬剤として使用すると、強い抗炎症(炎症を抑える)作用などがあるため、
抗炎症薬としても使われています。
ただしステロイドには、免疫抑制による感染症や、
骨量低下による骨粗鬆症を引き起こすなどの副作用もあるので、むやみやたらに使えないのです。

そこで、代わりに使われるようになったのが非ステロイド系の薬剤ということになります。

また、非ステロイド系抗炎症薬はNSAIDsとも呼ばれます。
これはNon Steroid Anti Inflammatory Drug’s(非ステロイド系抗炎症薬)の頭文字を取ったもので、
「エヌセイズ」と呼ばれることが多いですね。

ですから、お医者さんから処方してもらったシップや、
薬局で購入したシップに含まれている抗炎症薬は、
たいがい非ステロイド系抗炎症薬(以下NSAIDsと表記します)です。

NSAIDsにも色々な種類があります。
古くはサリチル酸、その後はアスピリンなどが開発され、
今ではそりゃあもうたくさんの種類があるんですよ。
有名どころですと、プロビオン系のロキソプロフェンナトリウム(商品名はロキソニンですね)、
アリール酢酸系(フェニル酢酸系)のジクロフェナクナトリウム(商品名はボルタレンなどですね)などなど・・・
こういった成分が入っているのです。

余談ですが、こういったNSAIDsが含まれているシップを貼っても何も感じないそうです。
でも、実際に貼ってみると、だんだんスーッと感じてくるものが多いですよね?
それは、前回のお話しでも出てきたメントールなどの冷感成分によるもので、
あくまでも「おまけ」なんだそうです。

実際に製薬会社の人も「スーッとするのはおまけです。何も感じないんじゃ売れないんですよ・・・」
と、お話ししておりました。

NSAIDsの薬理作用は、①鎮痛作用、②消炎作用、③解熱作用などです。
シップに含まれたNSAIDsが経皮的に体内へ入って行き、
アラキドン酸に作用するシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより、
炎症時に産生されるプロスタグランジン(PG)の産生を抑えることができるのだそうです。

この作用によりNSAIDsは上記の薬理作用を有するのですが、ここで言いたいのは、
つまり「プロスタグランジンの関与が少ない部位(炎症のない部位)にNSAIDsは効果がない」
ということなのです。

接骨院を訪れる患者さんの中には、シップを使用している方がたくさんいます。
そういった方々の中には、ある負傷部位を施術している最中に、別の部位、
例えば肩まわりにシップが貼ってあったり、腕にシップが貼ってあったりする場合があるんですね。

我々も気になりますから「あれ?〇〇にシップが貼ってありますね。どうしたんですか?」
なんて聞いてみると、結構な割合で
「あー?いやなに、肩が凝っているから薬局で買ったのを貼ってるんだよ。」とか
「腕がしびれるから前にお医者さんからもらったの貼っているんだよ。」
なんて言われる患者さんがいらっしゃるのです。
しかも、聞いてみると、NSAIDs入りのシップなんですね。

当然、肩凝りの部位やしびれを感じている部位に貼っても、NSAIDsの効果は期待できません。
そういった患者さん達には
「そのシップで効果があるのか、お医者さんや薬剤師に相談してみた方がいいですよ!」
なんてお話しをさせていただいております。

また、「さっき足首をひねってしまった!」なんて患者さんには、患部に炎症が起きていますから、
アイシングなどの冷却処置も行いますが、シップを選択する際には少しでも患部の熱を下げるために
「パップ剤を使おう」とか「NSAIDs入りのシップを選択すべきか」など、
その時の状況に応じて、適宜、判断させていただいております。

以上、ここで紹介したのはごく一部ですが、
シップひとつ扱うのにも結構色々な知識がいるんだなーなんて思っていただけましたでしょうか?
我々、かんな接骨院のスタッフは随時、勉強や練習を行い、
こういったものにも対応できるよう、日々精進しているのであります。 (‘◇’)ゞ ビシッ!!

さて、長くなりましたので、今回はこのへんで。
続きはまた今度。

ではでは。

 

次の記事:「湿布(シップ)についての豆知識その4(意外と知らない副作用について)」に続きます。